アンセルはデンマーク体操を愛好するグループです。

アンセル通信・コラム

アンセル通信

vol.31(2008.10.28)
目次
堀内 浩二

9月12日、濱田靖一先生が94歳の天寿を全うされ逝去されました。あのお元気なお姿を拝見できない事は残念です。 アンセルを可愛がって頂いた事が思い返されます。

濱田先生はデンマーク体操友の会の発足前後から密接にご指導に力を入れて下さいました。勉強会・交歓会にいろいろなアイデアを ご披露して下さいました。1995年5月27日には、体操講演会を企画、先生の立派なテキストを用意し、本格的な勉強会を行いました。 体操交歓会でも主役を務めていただいたり、1996年7月7日のキス先生来日の会には、キス先生60歳の集いとしていろいろお世話を 頂きました。
2004年7月、濱田先生90歳卒寿記念のデンマーク体操交歓会を企画。元気で長生きの秘伝をご指導して、会を楽しくさせて下さい ました。
  アンセルをこよなく愛し、ご支援下さいました事を、改めて感謝申し上げます。先生が90歳までに書かれた著書・論文は289冊に及び、 その後も体操徒然草のIIとIIIを執筆され、驚異の頭脳に頭の下がる思いです。

ここに安らかなご冥福をお祈り致します。

濱田靖一 先生が描いてくださった
 アンセルのシンボルマークです
村松 恭子

30年程前、初めて先生のお宅へ伺った折、「3回宙返りが出来るのは3杯飯が食えるのと 私はさして差がないと思うな」と いたずらっぽく話され、びっくりしたものです。
先生はきら星の如き沢山の教え子に慕われ、その中にはオリンピックのメダリストもおられます。競技体操の素晴らしさは充分に 認められても、あえてそんな風に言われて0.1の点を競うのではなく、喜びと共にする体操の素晴らしさを常に語り、世に広めようと なさっておいででした。その情熱は90歳を超えても盛んで、昨年秋のペア先生の講習を見に来られ、その指導に感動されて、 「今こそ日本の体操界に我々は何かを成さなくてはならない!」と熱く語られていたご様子が、鮮やかによみがえります。

2000年、私たちが「体と文化」チームの受け入れに奔走していた頃、'まっく'の向井先生が「濱田先生がアンセルに協力せい!  協力せい! と言われるから〜」と漏らされた事がありました。私達が気付かない時にも、私達はそんな先生のお気持ちに支えられ てこの10年を過ごしてこられたのだと思います。

9月14日、私達はまだ何も知らずにおりました。いつもの交歓会には喜んで来て下さり、励ました下さる先生においで頂けなかった 事を残念に思いながらも、10周年の喜びに包まれておりました。でもあの時、先生はこの世にはおられなかった。不思議な気がしま す。もしかしたら先生の魂は時間や距離を越えて来ていて下さったのかもしれません。

 先生、有難うございました。きっとまたお目にかかれると信じております。

秋月 とし子

濱田先生が9月12日に亡くなられたという訃報は、16日早朝の清水さんからのメールでした。14日の私達の祝賀会に直前まで ご出席いただけると聞いておりましたので、あまりにも悲しい突然のお知らせでした。

春に恒例の先生のお宅のお花見会でお会いしたのが久しぶりで、また最後になってしまいました。初めて先生にお目にかかったの がいつ頃だったか良くは覚えていないのですが、私がビボーから帰ってきた年(1982年)の後、デンマークから体操関係の人が来日 すると連絡が入る様になり、ご一緒させていただいた気がします。

その後、幾度とお会いする機会がありましたが、'まっく月一会'での先生を囲んでの勉強会(1993〜94年頃)は、今思い返しても 贅沢な時間でした。<体操とは何か><体操をする意味>、<練習とは何か>等々、先生の幅広い知識あふれるお話には、いつも 尊敬の念を抱き聞き惚れていたのを思い出します。例えば練習とは 「上手になろうとする気持ちの反復」大切なのは気持ち、その通りでしょうか。

最後に、先生にもうお会いできないと思いますと、とても寂しい気持ちになりますが、先生はご自分の人生を体操と共に悔いなく 生きられ、ここに94年の幕が見事に引かれたと、私は確信しています。本当にお疲れ様でした。ありがとうございましたと申し上げ、 また心よりご冥福をお祈り申し上げます。

清水 美千子

濱田先生というと、目に浮かぶのは目をキラキラさせ好奇心に満ちた子どもの様な暖かい笑顔です。先生がいつもお元気で お若かったのは、あらゆる年代の人を惹きつける子どものような無心さを持つお人柄ではないかと思います。

先生と初めてお会いしたのが、いつ・どこであったか全く思い出せません。いつの間にか先生とお知り合いになり、お話をさせてい ただく様になりました。日本大学の名誉教授でいらっしゃいましたが、その様な素振は微塵も見せず、誰をも暖かい雰囲気に包み込 んで話をして下さいました。先生の知識の広さ・深さは想像もつきませんが、話してくださる時は分かりやすい言葉でユーモアを交 えて説明して下さるので、感心して聞いていたものです。

先生はご自分のことを「体操をこよなく愛する日本人」とおっしゃっていましたが、本当にその通りでした。ご著書の中に 「スポーツには相手があり、相手に関心がそそがれるので、活動の動機は外にある。体操は自分の体が対象なので、動機も関心も 志向も内である」。そして「我を忘れるのがスポーツ、我と出会うのが体操」と。ご自宅の庭に体操のためだけの体育館を建てる のが夢だったと何度も伺いました。

アンセルの良き理解者であった先生は、今愛する奥様と一緒に大好きなお酒を飲みながら、下界の私達を見守っていてくださると 思います。先生に「本当によかった!」と言っていただけるように、アンセルも力を合わせて前進して行きましょう。「先生、 これからもよろしくお願いいたします」。

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